久々に夕方の西空は雲を抱きながら
清しく青く澄んでいた。
太陽は傾きながら雲のまばらな間から
かくれんぼの子供の様に見え隠れしながら
光を拡散して生けるものに照り注いでいた。
やがて、その強さはやがて周囲の空を
茜色に染めながら西の建物の中に消えていく。
そこには、
この軌道をいつも眺めている植木がいた。
家の藤棚がそうである。
遊びに来た友人が、
庭を眺めながら、藤棚に向かって
「家の日傘」だねと呼んだのを
その後、うちでは
「いえの日傘」くんと
親しみを込めて呼ぶ。
太陽の動きを豊かな葉の量で受け止めて
真夏の家に注ぎ込む光の強烈な光の波の
防波堤となっている。
このため、今年の夏の太陽の強烈な熱波から
守られて豊かな涼しさを受けているのである。
刈りこんだ今
あたかも自然の間接的に導入したクーラーのよう。
草深い林の中を通り過ぎてやってきた様。
刈りこんだ今
他にも、フジの木、紅葉、棒樫、椿、山茶花、牧や
アラカシはあります。皆、個々の役目があります。
この藤の木は人気の樹木で、使われ方はいろいろあ
るが、遮光の利用で役に立っているとの観点から
見ると
改めて、これほど私たちの役に立ている木は
ないのです。
遮光だけでなく、冬の到来とともに、
自分の纏(まと)っていた葉を脱ぎ捨てて
迎光の役目もしてくれる。
ヒタヒタと到来する冬の季節には、葉を脱ぐことは
広葉樹だからこの木の宿命だが、
その時こそ、ゆっくり休養を取り、来年への
鋭気を養い、また役立つことを願うのである。
上が南
ありがとうございました。
完。