昨年12月中頃,
私は日が落ちる前に付近の風景を
取りたいと思った。
近所から始まり少し遠出をしながら、
小さな墓地の周りを通りながらゆっくりと
自転車を走らせた。
今の時期には、あまりいい花が見あたらず、
自転車でさまようように、
ゆるゆるとペタルを踏むだけだった。
数十mほど川べりを進んで、
橋を渡ってさらに進んで民家に通り
掛かったとき、玄関に目が止まった。
平屋のこじんまりとした壁際のぐるりには、
植木の棚が祭壇の様にぐるりと敷かれていて、
十数本の花が無い鉢植えの幹だけが、
妙に気取った影絵の様にひっそりとたた
ずんでいた。
私は植木や花の名前はあまり知らなかったが、
針金で巻かれた松、や 整然とした
その鉢の並びを見て、家の主の植物に対する
愛情のこまやかさや花好きの証が感じられた。
目を移すと思はず、玄関に 花キャベツの花が
3輪咲いていた。2輪は中が赤側が緑の
玉で、もう1輪は中が白と緑の見事な花。
写真を撮るにあたり、チャイムを鳴らす。
一呼吸おいて家主の男性が、けげんな顔で
私を見る。
「お花を撮れせて下さいませんか」と尋ねると
ほころんだ顔で、
「いいのが今はありませんが、いいですよ。」
と、
「ほかの人が時々撮られるけど、
挨拶はなかったなあ」と
笑顔で、許可をくれた。
この時はいつも緊張する。
ほっとした瞬間だった。
背中にやわらかな
ぬくもりの西日を感じた。
お付き合いありがとうございました
20j24
完